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ヘルシンキで子育てできない家族を教育する

 最終更新日  

オウルンキュラにあるファミリー・リハビリテーションセンター

ヘルシンキ中央駅から郊外電車で3駅のオウルンキュラにあるファミリー・リハビリテーションセンターは、「泊まり込みで虐待家族のリハビリ」と、最終の養護受け入れ施設が決まるまで児童を擁護する施設。1973年に運用が開始され、2010年12月に2700㎡の新しい施設が完成した。

施設長のオイリイ・グロンルース女史、ソシオノミー資格保持者マリー・ヒルヴォネン女史、リハビリ担当のキルスティ・ノケライネン女史などが説明、案内してくれた。

フィンランドでは伝統的に児童養護や高齢者介護は施設で支援サービスが実施されてきた。だが2008年に改正された児童保護法では、施設でのサービスを減らし、家庭での支援を推進することになった。具体的には里親によるケアを推進、在宅ケアを充実させ、ケアをしている家族への支援も手掛けることになった。

2013年にヘルシンキ市の福祉部門と保健部門が統合して、窓口の一本化が図られた。住民が高齢化していき、納税者が少なくなるので、内容の効率化を図り、スムーズにサービスを行う方向へ転換する。福祉保健局には①家族と福祉、②依存症、③リハビリと高齢者サービスの3つの部門があり、ファミリー・リハビリテーションセンターは①家族と福祉の中の児童福祉サービスの中に組み入れられた。縦割り行政ではあるが、各部門が協力し合うことになった。

ヘルシンキの人口は約61万人、うち0-17歳が10万人おり、うち8,300人が児童福祉サービスを受けている。その80%が在宅ケアを受け、20%が里親や施設で暮らしている。しかし、予算は20%が在宅ケアのため、80%が里親や施設ケアに分配されている。

オウルンキュラ施設の地図

☆緊急保護部門

ヘルシンキ市内には2か所の緊急保護施設がある。この他に年少児の施設があり、あとは家庭が対応する。2008年にはヘルシンキ全体で478件の保護があり、うち約100件をオウルンキュラが担当した。0歳から12歳までの保護理由は多い順に、①親のアルコール中毒と薬物問題が80%、②親の精神病・神経症、③子への虐待、④知的障害などで子育てできないなど。問題の多くは親にある。13歳から18歳の場合は、本人のアルコール中毒・薬物問題が85%という。

ここに3つのホームがあり、定員は7歳から12歳の子ども各7人。各ホームに7人のインストラクターと責任者が1人いる。ファミリーセラピスト、クライシス・トラウマ・サイコロジスト、心理療法士なども参加する。1日3交代制だが、状況にもよる。

地域のSWはヘルパー派遣などを実施して親子関係の改善に努めるが、これ以上は無理と判断したときは、緊急保護をここに依頼してくる。

緊急保護の子どもはここから学校に通う

緊急保護の場合、原則として受け入れてから30日以内に支援の方針を決め、延長が必要な場合はここに残るか、他の家庭でのケアになる。

子どもがここにきている間、親は自宅で過ごす。親とのミーティングにはファミリーセラピスト、クライシス・トラウマ・サイコロジスト、心理療法士の誰かが参加し、家族と対話しながら家族自身が生活を変える姿勢を持たせるようにする。家族自身が問題を見つけ出せるようにしていく。子どもはミーティングに参加しない。

自宅へ戻す場合は、ここでの生活を残しながら少しずつ進める。自宅へ戻れない場合は、最終の養護受け入れ施設が決まるまで子どもをケアする。

緊急保護の子どもたちはここで食事する。職員がついて指導する

2~3か月の保護期間が終わり、自宅へ戻ったあとは、保護以前に受けていた在宅ケアが始まり、地域の所のSWの週1回の家庭訪問が続く。自宅に戻っても、またここへ戻って保護されるケースもある。

☆家族リハビリ部門 

職員は10人で、7人が高等専門学校で3年学んだインストラクター、心理療法士、SW、責任者。

問題がある家庭にはインストラクターがつき、週に2回話し合いを持つ。暴力的な子ども、行動異常な子どもには機能療法士に治療させる。それでも地域のSWが問題があると判断した場合、リハビリが必要か検討する。スタッフが家を訪問して調査。SWが問題視したこと、子どもは学校に行っているか、親はリハビリ中に仕事を長期欠勤できるか、1~2か月にわたり調査する。必要と判断されれば、親が拒否すれば、子とは絶縁になると説得し、半強制的にリハビリを開始する。職場にはリハビリ休暇申請を出し、社会保険庁から補助金が出る。

ここには6家族が8週間暮らせるスペースがある。リハビリは6家族が同時に開始し、週末は宿題を持って自宅へ戻る。日曜の夕食時に家族が到着し、金曜の午後に帰宅する。平日は家族ごとの時間割に従って、勉強、ミーティング、親子遊び、スポーツ、昼食調理、サウナなどで過ごす。職員もほぼ一緒に過ごす。参加者は親たちの勉強会やグループ・ディスカッション、調理・掃除などを通じて、お互いに助け合うように指導される。

家族丸ごとのリハビリをして、両親としての自覚を身につけてもらう。日常生活がうまくできない人を指導する。また、子どもは親の言う事を聞かず、悪い者という考えの親たちは、子どもとのコミュニケーションがうまくいかない。平均的・正常な段階の家族の在り方を親たちに理解してもらい、18歳以下の子どもの飲酒やタバコ、覚せい剤使用を防ぐようにしていく。リハビリ中、幼児は週に2日保育園へ行き、3日はここで親と過ごす。児童は学校へ通う。遠方の場合はタクシーの手配もする。

リハビリ家族たちのための食堂

退所後のケアをスムーズにするため、4週間過ぎるとセンターの在宅ケア担当者が加わる。8週間のリハビリ終了からは、この担当者と地域のSWが4週間にわたって支援にあたり、週に2回、数時間の家庭訪問をする。子どもが学校へ行く時間に訪問して、子どもの準備を間違いなくさせているか、朝食、持ち物、トイレなどの指導をする。実際的な指導が大切。

在宅ケアを受けている家族のリハビリもある。16家族が自宅に住みながら、ここに通ってプログラムを受ける。

フィンランドでは子どもから親への尊敬の念が薄らいでいる。親に問題があるので尊敬できない場合が多い。利用者は支援ネットワークを持たない独身の親が多い。子どもに早く自立してもらいたくて、十分にケアしない傾向がある。ここでは支援ネットワークをつくるように努力している。リハビリ終了時には、地域での軽いネットワークができている状態にする。

日本にも緊急保護をする一時保護所がある。しかし、家族リハビリ施設は日本では聞いたことがない。問題がある家族は親子を離して暮らさせればいいという考えは、短絡的で安易だ。最終的には、再び親子が一緒に暮らしていけるように支援していく必要がある。北欧諸国では家族リハビリが広く実施されている。地域のファミリーセンターの中にリハビリ棟を設けたり、家庭へ訓練ヘルパーが6か月くらい通って教える訪問リハビリもふつうに実施されている。日本も早くこうした方法を取り入れてほしい。里親のなり手が少ないのは、先進国はどこも同じだ。北欧の行政やこのような施設でしっかり学び、家族のリハビリに取り組んでほしい。

家庭内暴力被害者のシェルター

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