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デンマーク児童虐待防止の砦ファミリーセンター

 最終更新日  

ミゼルファート自治体の児童虐待防止、家族支援、家庭内児童保護

ミゼルファートの位置と議会、特長

ミゼルファートは、デンマークのフュン島最西部に位置する自治体。自治体の北部から西部、南部は、バルト海の3つの出入り口の一つであるリラ・ベルト海峡の流れが洗っている。海峡の対岸1km弱にはユーラン半島が見え、美しいシーサイド・リゾートとして人気がある。野生の鹿の保護区が数か所あり、国立公園も含んでいる。2009年11月の議会選挙の結果では、社会民主党が37%で11議席を占め、次いで穏健党が24%で6議席、社会人民党が13.4%で3議席、その他5議席の計25議席になっている。  主産業は釘の製造だが、10軒ものホテルがあり、企業や公的団体の研修旅行の場として多くの人々を集めている。筆者は、これまでにこの自治体で保育、教育、フリースクール、障害児教育、学童保育、性教育、高校、青少年クラブ、国民高等学校、高齢者介護、認知症介護、訪問介護、精神障害者支援、知的障害者支援などを視察してきて、首都から2時間も離れた地方都市でありながら、首都よりも優れた教育、福祉を推進していることを目の当たりにしてきた。今回も、行政、議員、専門職員たちが一丸となって、家庭外児童を作らないように努力している様子を知り、頭が下がる思いがした。

ファミリーセンターの建物

かつては農家の母屋だった建物で、市に寄贈された。障害者の補助器具センターとして使われていたが、市内に完成した高齢者センターの1階に移転したあと、1999年にファミリーセンターが開設された。2007年の自治体改革の前の人口は18,000だった。

ファミリーセンターの業務

市の人口は38,100(2017年)ほど。ファミリーセンターは市の児童青年余暇課の傘下にある。市のソーシャルワーカーの調査を受けた約100家族と、自宅で暮らす子供250人を対象として相談、治療、指導している。親が養育できない場合に、その家庭で親の仕事を代わって行うことで親の役割を見せつつ、家庭を支援するコンタクトパーソンが3人いる。支援員、ソーシャルワーカー、教員などが時々会議を開き、連携を絶やさないようにしている。市の事務局長、議員ともに専門職の連携が重要と認識しているので、法律の有無とは無関係に推進している。

市のソーシャルワーカーの保護者に対する調査項目は、子の安全を守れるか、ケア能力があるか、愛情があるか、発達できるような刺激を与えられるか、しつけができるか、安定した生活を提供できるか、など。子供については食事、学校の状況、友人関係、発達段階、自己認識などを調査。家族については、家族員同士がうまく機能しているか、保護者の幼年時代、家族のネットワーク、住宅の状況、経済状態、地域社会との関係などを調べる。

予防の場合、匿名で電話や手紙で相談がくる。3回まで面談し、緊急の場合はすぐに解決策を作る。緊急性が認められない場合は10回まで面談する。治療に入ると、コンタクトパーソンが家族が住む家庭に行き、教育的な支援を行う。精神病の母親には、母親を教育する。また、家族治療は、家族をここに呼び、治療する。その中で暴力の連鎖などがわかる。それを断る家庭には、子を他へ移すと脅している。だが、脅したからくる家族は、面談でも反発するので、かえって難しくなる。

虐待を受けた子供たちの絵が飾られている

14人のスタッフはすべてファミリーカウンセラーであり、ペダゴー(保育や障害者の指導員的資格)か心理士。卒後教育を受け、性的虐待児童専門、暴力虐待児童専門、自殺願望児童専門、肥満児と障害児をもつ家族専門と担当別に業務を行っている。週1回は家族のグループ治療、里親の監査などを実施している。  被虐待児の治療は言葉ではできない。治療方法はセラピストが個人で選択できるが、ここではノルウェーのハルドール・ウーベレーデの方法を採用している。子と親とセラピストの3人が参加し、セラピストは子の反応をキャッチする。セラピストは暴力を振るわない親(暴力的な親にはこの方法はとらない)と会話し続け、子のことを考えてあげていることがわかるようにする。セラピストは「私は思う」としばしば言い、子供が心で感じられるように仕向ける。子どもが罪悪感を感じないようにする。  性的虐待を受けた子どもは、グループセラピーにすると、自分だけが被害を受けたのではないとわかる。安心感を抱かせることが大切。  3か月に1回報告書を作成してソーシャルワーカーに渡す。さらに6か月後に評価会議を開催する。会議で完治となれば、治療が終了する。

里親になるには、国の最低基準では5日間の研修が必要。里親開始後は、家庭外児童コンサルタントやソーシャルワーカーが相談を受ける。

うまくできない母親の家庭には、コンタクトパーソンが朝から晩まで滞在して、保育所への送りや迎え、洗濯や調理の仕方など、細かく支援し教育する。半年とか1年にわたって支援を続け、家庭外生活児童を作らないように努力している。

のんびりした港町でも児童虐待はある

 

福祉や教育、民主主義が進み、選挙の投票率が85%以上と日本よりはるかに民度が高いデンマークで、家事や子育てができない男女がいるとはここにくるまで想像できなかった。もちろん私の想像力の欠如だが、どんな国にも知的障害などの困難を持つ人たちはいるし、病気になる人もいるし、怪我をする人もいる。文化や習慣が違う外国からの移民や難民も増えている。子どもたちを守るために何が必要か、徹底時に考えて話しあい、子どものために保護に踏み込んでいく勇気がこの国の民意の高さを支えているのだといまさらながらに理解できました。

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