デンマークの障害者のための労働・居住・余暇・移動などの支援

      2018/05/01

知的障害者の暮らしを支える

成人の知的障害者は生活できるだけの障害者年金が国から支給される。借家の場合の家賃は払うが、年金から家賃を払っても食費や散髪代や衣類などの費用が払えるように家賃補助がある。基本の生活は年金でまかなうが、仕事や余暇などの社会生活にはさまざまな施設や制度がある。その一部を紹介する。

ミゼルファート自治体にある知的精神障害者センター

知的障害者・精神障害者センター

18歳以上の障害者のグループ住宅、デイケアセンター、アクティビティセンターなどが一つになった施設。グループ住宅はトイレ・シャワー・居間・寝室つきの個人用アパートで、1棟に数人ずつ生活している。アクティビティセンターは料理やスポーツ、ダンス、歌などを楽しむところ。

知的障害者地域仕事・体験センター

18歳以上で、仕事をしたいと望む障害者のための仕事の場。仕事の種類はセンターによって異なるが、陶芸、刺しゅう製品、木工製品など。コミューン設立の施設で、建物や就業先などに支援があるが、運営は独立採算制に近く、職員が販路探しに懸命になっている。勤務時間は8時から16時だが、早引きは自由。給料は時給制でかなり安いが、障害者年金は体験センターなどの施設職員の給料より高いので、給料のために働くのではない。 重い自閉症の人たちもいて、実際には仕事になっていない側面もある。指導員たちが懸命にまとめ上げている。都会のセンターとは別に、かつての農園を借上げて、動物用の飼料を育て、酪農に挑戦する試みもある。ここに知的障害者の住居を作り、指導員たちが交代で泊り込み、毎日農村生活を送っている。

 

薪割りは障害者作業所にとって大切な収入源

知的障害者余暇クラブ

25歳から65歳までの障害者が、1日の労働を終えたあとの月曜から金曜の18:30から22:00頃までの時間を使って、勉強したり、運動したり、遊んだり、社交を楽しんだりの施設。パソコン、料理、テキスタイル、シルクプリント、革細工、楽器演奏、乗馬、サッカー、ボーリング、水泳、ダンス、小旅行などが楽しめる。有料で夕食のサービスもある。これは、障害者だけの特別の制度ではなく、健常者にも同じようなサービスを提供している。

障害者が1日の労働のあとで楽しめる余暇プログラム

福祉タクシー

公共交通機関を利用することができない障害者が、仕事・体験センターや余暇クラブ、リハビリセンター、病院などに通うときに、交通の足として利用できる。費用は自治体が負担する。

障害者作業所、支援学校、学童保育などの終業時には自治体負担のリフト付きバスが迎えiにくる

SPUCグループ住宅の夫婦用住居.

知的障害者グループ住宅

8人くらいの障害者が、それぞれ広さシャワー・トイレ付き3m2ほどの住居を占有し、食堂や洗濯室などの共有スペースも利用しながら暮らす小型の集合住宅。24時間スタッフが常駐し、洗濯・食事・掃除・入浴など、できないところは支援している。自治体の中でも見晴らしがいいところや、広い庭があるところなど、若い健常者からみればうらやましいような住環境にしている。これは、知的障害者には、いまできる最良の住居を与えたいという、政治的な意思の表れである。健常者たちは長い間努力すれば、もっと広い住居に住むことができるが、障害者はいくら努力してもこれ以上の住居に住むことはむずかしい、という考えが背景にある。最近はほとんどの知的障害者がこのようなグループ住宅に住む。デンマークにもかつては、大型の知的障害者専用の居住施設が5か所にあった。いまも残っているのは、ユーラン半島中東部のスカナボーの緑の中にあるスーロンだけ。ここには、かつては500人ほどの重い知的障害者が住んでいた。現在は、かつての住居を解体し、各戸シャワー・トイレ付き35m2ほどの住居が8つほど集まった最新デザインのグループ住宅群をいくつも建設して、移住している。230人前後が500人超のスタッフの支援を受けて暮らしている。スーロンの運営費は自治体予算の3%にもなり、入居している障害者が生まれた自治体は、スカナボー自治体に介護費と住宅賃貸料などを支払っている。障害者施設は解体するというのが国の方針だが、スーロンの成功により、100人程度が住む住宅とハビリテーションやスヌーズレンなどを持つ施設が増えている。

SPUCの余暇センターで筋トレ

障害者保養所

健常者のための保養施設が各地にあるが、障害者のための保養施設も各地に点在している。車椅子のまま海に入ることができる桟橋があるドロニンゲン休暇村(グレナ)、廊下の反響音を変えることで交差点を知らせたり、床材の感覚で廊下の先の状態を示すなどの実験的な試みをしている視覚障害者のためにフールサングスセンター(フレデリシア)など、障害者団体や患者団体が作る施設は、自分たちが利用しやすいものにしたいという気持が表現されている。

成人障害者教育施設

18歳から20歳くらいで高校を卒業したあと、成人の障害者を対象とする国民高等学校に入る人もいる。寄宿舎も完備され、3-6か月くらいのコースがいくつかある。

2007年からはSTUという成人教育制度も運用されている。10年間の義務教育終了後から25歳までの間の3年間に公認の教育施設で学ぶことができる。8か月の実習という縛り以外は、テーマ、場所、時間などはゆるやかで、本人の体調、精神状態、意欲に従っての教育という配慮がある。義務教育まで一言も話せなかった自閉青年がSTUの粘り強い教員の努力で、言葉が出るようになったという例も聞いた。教育の目標は、デイサービスや公立の作業所でない、民間の労働に就くこと。

若年障害者教育施設STUでの1対1の授業

 - 北欧視察・研修

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