デンマーク、コペンハーゲン郊外の高齢者介護多機能施設

   

ヘルパーの訪問介護を受ける高齢者が住む住宅

コペンハーゲン郊外にある人口約63,000の自治体のシニアセンターを訪問しました。責任者のジェシー・ルーケ女史、作業療法士のリーナ・ラスムーセン女史などが介護の状態、ユニットケア、ターミナルケア、胃ろうの選択、嚥下訓練看護師などについて説明してくれました。ここには129人が入居する介護付住宅部門、440人前後の在宅老人をお世話する在宅介護部門(3週間に1回の掃除程度から、1日6~8回の介護まで)、理学療法と作業療法のリハビリと機能訓練、外反母趾や深爪などのフットケア、歯科治療、認知症デイケア、精神障害者デイケア、視覚障害者デイケア、理容、カフェテリア、配食サービスのセントラル・キッチンなどがある大規模な高齢者介護住宅施設です。1990年代に入って、かつての高齢者施設だったプライェイェムが閉鎖されて、その代わりに建設されたのが、ここのように一つの施設にいくつもの機能を集中させた多機能施設です。ここに入れば、他にはどこにも行く必要がなくなり、人生が終わる隔離、という批判もありますが、デンマークのほぼ全土にこのような多機能高齢者施設が作られました。

多機能施設の管理部門の玄関

 

 ☆介護付住宅部門

入居部門は、以前は介護施設でしたが、いまはキッチン・トイレ・シャワー室付介護付住宅になり、各戸に郵便受けや電気使用量メーターがつけられました。生活リズムも強制的な規則がなくなり、好きな時間に食事がとれ、自宅食もできるようになりました。建物は住宅会社のもので、家賃はそちらに払います。介護費用、食事、掃除の費用は自治体に払います。スタッフと利用者との割合は、この自治体では人数で決めるのではなく、介護の必要度で決められるように変更になりました。これは毎年見直しが行われています。129人の住人に対して、月平均延260人のスタッフが介護しています。シフトは、昼間勤務は7時から15時担当で3日勤務1日休み、午後勤務は15時から23時に2日働き2日休み、深夜勤務は23時から翌7時で7日続けて働き7日続けて休みと複雑になっています。入居が決まると本人、家族、職員と話会いを持って、体調や生活のリズム、ここでの希望などを聞きます。こちらからは、ここでの暮らし方、1日のリズム、四季の楽しみ、不満があるときの相談の仕方などの説明をします。自宅で一人暮らししてきた方が多く、みな痩せすぎになっていますので、入居したら、まず体格を図り、国際基準にあっているか照合します。これまでの食生活を調べ、嫌いなもの、受け付けないものを聞き、好きなものを食べてもらうようにします。きれいに盛り付けて食欲を増してもらい、やせすぎの方には太る方策を考えます。入居後3か月を経て再び話しあいを持ち、これまでの生活を振り返り、お互いに改善すべき点を探し、さらによい暮らしを考えます。

介護付高齢者住宅部門

病院が胃ろう手術をした人には、それで満足せずに、以前のように口から食べることができるようになるまで努力してもらいます。もちろん本人の希望も聞きますが、食べる、飲む楽しみがなくなるのは悲しいと感じているはずです。すべての人の胃ろうをはずすことに成功し、いまは一人もいません。入居者の平均年齢は85歳で、大半の人が認知症をわずらっています。

 ☆少子高齢化時代の職員

職員の資格は、16か月の勉強と実習を積んだ社会的ヘルパーが主力です。さらに1年の勉強と実習を経た准看護師が投薬や注射も担当します。理学療法士2名、作業療法士1名、調理師などもいます。職員の介護力を上げるための研修はたくさんあります。職員と管理職の両方から求められます。たとえば、死についての知識をもっとつけてほしいと職員から希望がでました。超高齢者が増えているので、ターミナルケアについてについて研修を受けたいという希望が強くなっています。

職員の精神的なケアも重要です。家族からの苦情は大きなストレスになります。職員を二人でひと組にして、常に意見を言い合うようにしています。つらい思いを一人で抱え込まないように、みんなで助けあうようにしています。職員グループと家族会との話し合いも持ちます。

職員が体を痛めないようにする技術は徹底的に教えます。少子高齢化の時代だし、介護職に入る人も少なくなっています。一人の老人をケアすることによって一人の職員の体が壊れたら、社会は大きな損失を受けます。ここでは人の移乗には、すべての職員がリフトを使います。また子育て中の職員の勤務時間は、特別に配慮しています。

一人住まいの高齢者

☆デイケア

自宅に住む高齢者も、希望者は昼間はここにきて入居者と一緒に活動します。共通のトレーニングは立ったままの体操、座ったままの体操をやります。入居者に対しては全員のリハビリ・プログラムを作ります。認知症の方はよくなることはありませんが、現状維持を目標にしています。昔のことを思い出したがっているので、感覚トレーニングとして昔あったお店や映画、俳優などの話をします。視覚障害者には体のバランスをとるため筋肉トレーニングをしっかりやってもらいます。精神障害者には会話の相手をすることが大切ですが、筋肉トレーニングも加えます。

昼間の活動にはゲーム、ビンゴ、リハビリ、朗読、トランプ、ジグソーパズル、お絵描き、ダンス、ビーズ細工、車椅子ダンスなどがあります。ときにはミニバスで遠出し、森の中を散歩をすることもあります。利用者の意見も聞き、プログラムを変えていきます。

施設の調理場

☆口から食べられなくなったら

入居者が食べられなくなったら、飲み込む力をつける練習をしてもらいます。各種の飲み物を飲むことから始め、ヨーグルトやゼリーを加え、カロリーを50%増しにし、刻み食も加えて、半年くらい努力すると食べられるようになります。段階的に進め、朝昼晩のうちで一番吸収しやすい食事に力を注ぎます。この国の生活では、みんなと一緒に食べることが重要です。誰かに手伝ってもらってでも一緒に食べることができるようにしていきます。このため消化機能を高めるようなリハビリも考えています。胃ろう手術を受けるかどうかは本人の自由です。自分から積極的に手術を受けるという人はここには一人もいません。ふだんから入居者と死についての話合いをしています。努力しても食べられなくなった人に、無理にでも食べろと強制はしません。死ぬとわかっていても、本人の意思に任せます。家族は親に生きてほしいと希望しますが、本人の意思が重要です。死にたいという方でも、老人性うつ病の場合は薬で治療します。食べられなくなったことを医師に連絡するにしても、まずは本人の了解が必要です。

平均すると1年間に60人前後の方が亡くなります。

 - 北欧視察・研修

電話でのお申し込み・お問い合わせ

03-3506-0757