1. 海外旅行・ツアーTOP
  2. 旅コラムTOP
  3. 北欧視察・研修
  4. デンマークのヘルシンガー自治体にあるグリュモーゼ基礎学校のインクルージョン

デンマークのヘルシンガー自治体にあるグリュモーゼ基礎学校のインクルージョン

 最終更新日  

学校の全景

デンマークの首都コペンハーゲンから北へ45kmほどのヘルシンガーHelsingør自治体(2018年人口62,686)にある、エスペアゲート基礎学校に属するグリュモーゼ基礎学校を訪問しました。この学校は1980年に設立されました。1990年に、当時のフレデリクスボー県(2007年に県は廃止)から、同県内の特別支援学校で学ぶ障害児たちも受け入れられないかと打診があり、障害児たちのクラスをつくることにしました。そして、学校を保育園から2年生までのTeamⅠ、3年生から5年生のTeamⅡ、6年生と7年生のTeamⅢ、8年生から10年生のTeamⅣ、障害児のTeamVに分けて運営することにしました。1993年に視察したときは、TeamⅠからTeamⅣには約300人、TeamVに29人が在籍していました。職員は74人でした。インクルージョンを意識していて、音楽、手芸、裁縫、木工、工作など、テーマは限っていましたが、TeamV在籍の軽度の障害児を普通学級のクラスの授業に入れる試みを実施していました。また、TeamVの教員が普通学級のクラスを受け持つこともありました。また、全校の学校行事、Xマス、体操の日、コンサートなどには、全員が参加していました。

障害児のための校庭

それから25年後に、どのような変化あったか知りたいと再びTeamVを訪問しました。責任者のキルステン女史、ペタゴー(社会生活支援員)のヘンリエッテ女史が説明してくれました。

いまのグリュモーゼ基礎学校は、TeamⅠからTeamⅣがなくなり、0年生から3年生、4年生から6年生430人が各学年2-3クラスで学んでいます。TeamVはそのまま残り、近郊の2つの自治体の障害児を含めて、6歳から16歳の「10年生」まで75人が学びます。0年生とは、保育園から学校へ円滑に移行できるように、1日に3時間程度、学校で授業を受けます。デンマークの保育園児は、森が保育園になっているところなど、自然の中で自由に遊ぶことに重点を置いているので、教室でじっと座ってお話しを聞くのは慣れていません。6歳の1年間は、少しずつ、教室の椅子に座る、先生の話を聞く、ほかの人の意見を聞く、自分の意見を言うなどに慣れていきます。2009年8月から義務になり、義務教育は10年になりました。

集中できるように廊下を区分した学びの場

25年前に比べて、児童の数は倍以上に増えています。出生前検査が義務化されたので、ダウン症児が減りました。しかし学習障害、自閉症の子が増えました。特に知的障害がある自閉症の子が増えました。25年前は、学校にいるのは3時間で、そのあとは学童保育にいましたが、いまは朝から夕方まで、学校にいます。それだけに職員の専門性を高めています。教員やペタゴーのほかに理学療法士2人、作業療法士2人、言語療法士3人、心理療法士1人がいます。

入学する例では、まず保護者が学校に連絡してきます。最初は子どもなしで学校に来て、親と話をします。夏休み前に実施するオープンキャンパスの日に、学校にきてもらい、子どもと親に学校の様子を説明します。職員とも会い、会話し、校庭や教室も見学します。その後、保育園の担当者、親、子ども、学校が面談して入学が決まります。夏休み中に、学童保育にきてもらい、学校に慣れてもらいます。

時計を使った算数の授業

入学後は、不安になっている保護者とは密なコンタクトをすることが重要です。ipadや電話、連絡帳で毎日連絡します。保護者との面談は年に2回セットします。達成目標作りと評価をします。さらに年に1回、この学校で学ぶのがいいか、評価します。

入学してもすぐに授業はできません。この学校の教育方法では、その子の体調を見ながら、体調にあったことを教えていきます。昨日できたことでも、今日はできないかもしれません。感覚、コミュニケーションを大切に、いろんな学習ができるようにしています。安心して授業を受けられるように、1日のプログラム内容をはっきり知らせます。時間ややることを、絵文字を使って教えます。サインとシンボル、曜日の匂いや色、曜日の歌などの毎日のとりくみ。視線で動かすパソコンを使っての教えと学び、このパソコンを使えば自分の意志が伝えられ、自分で選ぶことができます。小さなことでも、自分で選ぶことができれば、自分の人生に影響を与えることができます。

衝立を使うなど、集中できる場を作ることも大事です。休憩も重要。横になったり、校庭で遊んだり。からだを動かしたり。運動することで学習能力は高まると言われています。”学習の窓が開く”と。運動すると知識の吸収が増えます。可能性をできるかぎり発達できるように、支援しています。

 

校庭も見せてもらいました。25年前になかった新しい、Team Vのための校庭です。ふつうクラスの子どもたちは入れません。発達障害がある子どもの中には、ちょうどいいという加減がわからず、強い力でいつまでもブランコをこぎ続ける子がいます。これまでにいくつものブランコを壊してきたそうです。ペタゴー(社会生活支援員)の指導のもとで遊ばないと、ほかの子どもに怪我をさせかねません。Team Vの校庭で、通常学校の子どもたちと一緒にやったことは、庭に花を植えたことだけだそうです。

健常児と障害児が造った花壇

デンマークは障害者権利条約の実現にむけ、2012年にインクルージョンに関する法律をつくって施策をすすめています。むこう10年で96%の子どもたちを通常学校で学ばせることが目標だそうです。この学校は、通常学校と障害児クラスを持っています。国のインクルージョン推進に沿っています。同じ学校で学び、お互いの姿を見る、時々は一緒の授業も受ける、一緒に行事の時間を過ごす、そういう無理のないインクルージョンを選んでいるようです。

「子どもらがいきいきとした学習。生き生きといられる場所がこの学校です。これからも知的障害児にはずっと必要な学校です」

とキルステン女史がしめくくりました。

 - 北欧視察・研修

最新情報や現地の写真をSNSで発信中!

LINE@友だち追加で1000円OFFクーポンプレゼント中